Aくん
書きかけて途中でやめようとして、でも、やっぱり書き留めておこうと思う。
むかし、母の親友が時々遊びに来たときに一緒についてきた男の子、母の親友の子供だから幼馴染ということになると思うのだけど、Aくんと言うことにする。私は子供の頃、そのAくんがちょっと苦手だった。
私たち姉妹と彼の妹とで、お人形さんごっこや着せ替えごっこ、お店屋さんごっこをしているとき、いつも一緒に遊びたがったし、なんだかいつまでもフニャッとした感じで、小学校4〜5年生くらいになっても、みんなで一緒にお風呂に入りたがるから、そろそろ年頃で色々な事を意識しだしていた私は、「え・・・、私はいいよ。遠慮する。3人で入ってくればいいじゃない。」と言って、戸惑ったときはいつも、先に一歩引いて行動をした。
子供の頃は特に、分からないもの、理解できないものに対して気遣いをするより残酷な対応をしてしまいがちだけど、私もAくんに対しては、つい、いつもちょっと距離を置いてしまっていた。
彼は、いつも男の子の格好をしていたし、性同一性障害という訳でもなかったけど、ピンク色が好きで、キティちゃんが大好きで、いつも女の子が好きなことしかしなくて、子供の頃の私にとって「ちょっと何かヘン」だった。
何年もたって、人のあり方は様々であることが徐々に理解できるようになった後に、乙男、オトメンと言う言葉が出てきたとき、「ああ、オトメンね。Aくんもオトメンだなぁ」と、ストンと腑に落ちた。
ちょっと気が弱いけど優しくて、女子みたいな事が大好きなAくんと、どっちかというと男っぽいし、むしろあの頃は男になりたいくらいだった私とは、正反対で、あの頃は繊細な気持ちとかが全然汲みとれなくてごめんね・・・と思ったりしたけど、まあ、とにかく、彼が幸せで元気で過ごしてくれたらいいなぁとずっと思っていた。
その後、ずっと会う事もないままに、十年、二十年たったある時、Aくんが精神障害の認定を受けている事を突然耳にした。どうして?
Aくんのお父さんはもう退職されているけど、ある会社のとても偉い人で、優秀でバリバリ働き人一倍努力もしてきたすごい方だ。そして、自分と比べて、どう見ても出来ないし頑張らない(ようにしか見えない)息子を、マイナス評価しか出来なくて、叱咤激励し続ければいつかは本人も頑張るだろうと、これしか出来ないのか、なんで努力をしないのかと言い続けた結果、心の病気になってしまったのだとか。
理屈は後付けでは色々言えるけど、自分と違うものを理解するのは、本当に難しい。Aくんのお父さんも、子供がかわいいと思って励ましていただろうつもりが、どうしてここまで掛け違ってしまったのかなぁと思うと、悲しい。
色々あって、今、AくんはAくんのお母さんと2人暮らしだ。私も結婚して両親とは住んでいないから、Aくんのお母さんとも、もう何十年とご無沙汰をしている。
いまさら、私に何が出来る訳ではないけど、アドレス帳を探し出して、おいしい苺を週末にでも、送ってみようかなと思った。