知的財産についてまとめてみた

知的財産についてちょっと疑問に思ったことがあって、色々と調べてみたときに、表を作ってみました。折角だからアップしてみます。もしかしたら間違っているところがあるかもしれないので、ご指摘いただければ修正します。また、「こうしたほうがもっといいよ!」というアドバイスも歓迎しますw

知的財産分類とその特徴

分類 種類 保護対象 対象法令 保護期間

知的財産権
産業財産権 特許(発明) 発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち新規でかつ産業的に有用で高度なもの)を保護する。「物」「方法」「物の生産方法」の3つのタイプがある
自然法則を利用していない発想(アイディア)はどんなに優れていても「発明」には該当しない
カメラの自動焦点合わせ機能 特許法 出願から20年。医薬品等については延長できる場合がある
携帯電話機の形状を特殊な凹凸を設けることで握りやすい特殊な形状にしたもの
プログラムのアルゴリズム*1
実用新案(考案) 自然法則を利用した技術思想の創作のうち「物品」の形状・構造・組み合わせに関する考案に対して保護する権利。発明ほど高度なものではなく、言い換えれば小発明と呼ばれるもの。実用新案権は無審査で登録される。また、実用新案権の権利行使の際には特許庁発行の技術評価書の提示を義務付けられている 履き心地のよい形をしたスリッパ、より締め易くなった新型のボルトとナット等日用品の構造の工夫 実用新案法 出願から10年
意匠(デザイン) 物品(物品の部分を含む)の形状・模様・色彩のデザイン、又はこれらの結合であって、独創的で美的外観を有するものに対して保護する権利。形状、模様・色彩などが斬新な、「物品」と結合した工業デザインデザインに対して与えられる
操作が必要な物品のために使う画像で、かつ、その物品またはその物品と一体として用いられる物品に表示される画像(機器等の使用の際に同時に用いられる他の物品の表示部に表示される画像)が含まれる
ネクタイそのものの形状や模様 意匠法 登録から20年
液晶時計の時刻表示部のようにそれがなければ物品自体が成り立たない画面デザイン
携帯電話の初期画面のように機器の初動操作に必要不可欠なもの
初期画面以外の画面デザインや、機器からの信号や操作によってその機器とは別のディスプレイ等に表示される画面デザイン
ゲーム機本体の設定用画像
オーディオ機器の音量やバランス等の設定用画面、電子レンジの調理時間や温度などの設定用画面、携帯電話の初期操作用画面
商標(商品・会社等の名称・マーク) 商品・役務に使用する識別標識としてのマーク(文字・図形・記号など)に対して保護する権利。自分が取り扱う商品やサービスと、他人が取り扱う商品やサービスとを区別するために与えられる 会社や商品のロゴ 商標法 登録から10年(更新あり)
宅配便などのトラックについているマーク
著作権 著作権 文学、学術、美術、音楽の範囲に属するもの。コンピュータプログラムも含む。
※広義の著作権のうち著作者人格権は人格権
書籍、雑誌の文章、絵など 著作権法 創作時から著作者の死後50年(法人著作は公表後50年)
美術、音楽、論文など
コンピュータプログラムの表現(プログラムリスト)やフォントデータ*2 *3、アイコン
その他 不正競争の防止 公正な競争秩序を確立するために、著しく類似する名称やデザイン、技術上の秘密などの使用を差し止める インターネット上のドメイン名の不正取得など 不正競争防止法 期限なし。ただし形態模倣については発売から3年
他人の周知な商品等表示を使用して混同を生じさせる行為
原産地表示・地理的表示(原産地等誤認惹起行為の禁止)
周知表示(周知表示混同惹起行為の禁止)
著名標識(著名表示冒用行為の禁止)
商品形態(商品形態模倣行為の禁止)
営業秘密(営業秘密の保持・不正入手の禁止)
商号 営業上、法人格を表示するために用いる名称、社名 ○○株式会社など 商法第12条*4
会社法第8条*5
期限なし
植物の新品種 育成者権(種苗法)によって、植物の新品種を保護 植物の新品種保護 種苗法 登録から25年(樹木30年)
半導体集積回路配置 独自に開発された半導体の回路配置を保護 半導体集積回路の回路配置 半導体回路配置保護法 登録から10年
肖像権 肖像(人の姿・形及びその画像など)が持ちうる人格権・財産権。動物や物には認められない。現在国内で、盗撮行為を罰する際は、民事においては、著名人であっても私生活を許可なく撮影(盗撮)された場合は肖像(人格)権の侵害が認められる場合がある。しかし、肖像権は、法律で明文化した権利ではないため、刑事においては、わいせつ罪や各地方公共団体が定める迷惑防止条例を適用する。つまり、わいせつ要素が無い場合や迷惑防止条例に違反していない場合、無断で肖像を撮影・公開されても、刑事で罰せられることが無い。 法廷内における刑事被告人の様子を描いた絵(ただし、肖像画は原則として肖像権が認められない)
写真・動画などの被写体
最高(大)昭和44年12月24日「京都府学連事件」最高裁判所
判例/なお人格権は憲法第13条の包括的人権規定により定められている
法律で明文化された権利でないため、保護期間についても法律の定めはない
人格権
パブリシティ権 氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利。人格権に根ざすものであるため「物のパブリシティ権」は認められない。「正当な理由なく、氏名肖像を第三者に使用されない権利」を持っている点で一般人と著名人に違いはないが、著名人の氏名肖像は、特に、それ自体が顧客吸引力を備え、一個の独立した経済的利益や価値を持つ点において一般人と異なる 氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値
タレントの写真
平成20年10月15日最高裁判所判例/無断で商用利用しただけでパブリシティ権侵害 法律で明文化された権利でないため、保護期間についても法律の定めはない
パブリシティ権、肖像権は、法律上明文規定はないが判例によって認められた権利
アメリカではパブリシティ権の死後存続について、州法で存続期間を定めている場合もある(20年から100年までさまざま)

*1:ハードウェア資源を用いていない「アルゴリズム」それ自体は自然法則を用いていてなくて発明ではない

*2:フォント自体には著作権は認められていませんが、フォントデータはプログラムの著作物として保護されます
参照 H16. 5.13 大阪地裁 平成15(ワ)2552 著作権 民事訴訟事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/ADC04D23E1CE042949256F17003B0ACD.pdf

*3:参考までに、フォント自体の保護については、東京高裁平5.12.24決定で、フォントを不正競争防止法所定の周知な商品表示であるとして保護した判例があります

*4:(他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止)
商法第12条
何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

*5:会社法第8条
何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。